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屋敷物語 第三十九話 宝刀ガルディオス

ルークはガルディオスの屋敷でおとなしくしているしかなかった。
自分がどうやったら元の世界に戻れるか分からない。だが、この時代の事を
もっと知りたくもあった。ユリアの事を。

温かい紅茶の香りが、ルークの鼻孔を優しくくすぐる。これは、メイドではなく
ガルディオス本人が入れたものだろう。
(俺、そういえば、香りにはうるさいんだよな・・・)
ジェイドの香水に気がついたのも自分が一番最初だったし。
アッシュもこういうところは同じなのだろうか、と考える。

「なんでお前を助けたか、聞きたいのか?」
おもむろにガルディオスが聞いてきた。ルークは首を縦に振る。
「その剣が、突然光ったんだ。まるで誰かを助けに行けって言っているみたいに」
ルークは手探りで、ガルディオスの宝刀を探して触る。
「お前、その宝刀の事、知っているのか? ・・・・・・そうか・・・・・・」
ガルディオスは、紅茶が飲める熱さになるのを待つと、カップをルークの口元へと
寄せた。
「ゆっくり飲むんだぞ。こぼれてしまうからな」
まるでガイみたいに優しい。小さい頃、自分でまだ飲み物を飲めなかった頃の事を
思い出した。
「この宝刀はな、俺が近衛隊長になれた時、はじめて陛下から戴いた大切なもの
なんだ。その前はどういう道をこの宝刀が歩んで来たのかは分からない。だが、
きっと、由緒正しいものなんだろいうな。俺は、この宝刀に恥じない人間となろうと
誓った。願わくば、この宝刀そのものであるかのようになりたい、と」
「……」
ルークは自由に話をしたかった。それがすごくもどかしい。
「バルフォアなら、きっと君の声も光も取り戻せるだろうな。彼はそういう男だ。
君をきっと治してくれる。今度、ゆっくりバルフォアに君を診てもらうよ」
(バルフォア・・・・・・ジェイドの先祖だということなのかな??)
彼ならもしかすると、戻れる方法を調べてくれるかもしれない、とわずかな
希望の光を掴む。
「俺は分からない・・・・・・。どうして君のようなか弱い女性を世の中は魔女だなんて
言うんだろう。未来を詠むというが、どうやって詠めるというんだ。何かと誤解
されている、そう思えてならない」
紅茶の香りで幸せに浸れたからか、ルークはいつの間にか眠くなってしまっていた。

真白な空間で、ルークは漂っていた。
(夢、の中なのか?)
ゆっくりと歩いて行くと、やがてそこに、小さな少女が泣きじゃくっていた。
見える世界、というものが久し振りのような気がした。
『ごめんなさい・・・・・・ごめんなさい・・・・・・ただ、私の代わりになってほしかった
の・・・・・・もう、未来を知りたくないから・・・・・・・!』
(俺と同じだ・・・・・・。俺も、未来を知りたくない・・・・・・・・・・・・)
『君は、本当のユリア? なぜ俺をここに呼んだんだ?』
『私も、”あなた”、だから』
『え・・・・・・?』
『私も第七・・・・・・バルフォアに会っては・・・・・・駄目・・・・・・!』
『どうしてだよ、ジェイドの先祖なら、いいやつに決まってるだろ!?』
『だったら、あなたもここにいて! 第七音素の存在を知られてはいけない・・・・・・!』
『それはもう、知られてしまっていることなんだろ!?』
『だからなの! 過去を・・・・・・変えたくて、あなたを呼んだの・・・・・・・・・・・・』
『過去を、変える?』
『あなたの力を借りれば、預言のない世界にもできるのよ・・・・・・! 今からなら!』
『世界を、変える・・・・・・・・・・・・!?』
ルークは勝手な言い分だ、と思った。
『世界を変えたいなら、自分自身で変えろってんだ!!!!』
自分自身ではっとする。そうだ。それはまた、自分にも言えることなのだ。
少女に言えた義理はない。
『でも、お前も第七って・・・・・・?』
ルークは、肝心な処を聞きたかった。もしや、ユリアは自分と同じ・・・・・・。
いや、レプリカの技術を生み出したのは、ジェイドだ。ありえない。ただ、
レプリカだとすると、『生まれて七日で話ができた』という伝説に納得がいく。
(いや、ユリアもまた、俺だったのか・・・・・・?)
分からない。ここに存在している自分も、また、自分なのだ。

(・・・・・・ここは、どこなんだ・・・・・・?)
ガイは目を覚ました。見上げて景色を見渡すと、どこか立派な屋敷の中のようだった。
なんとなく、ホドの形式に似ている気がする、と思う。
自分を見下ろすように、一人の若者と赤い髪の女の子が囲んでいた。
(なんなんだ? 夢なのか? これはさっき助けようとした女の子・・・・・・?
なんだか、ルークに似ている気がするが・・・・・・もう一人は、俺に似ている気がする)
しかし、身動きができない。自分の体が動かせない。
(理解しがたいな・・・・・・。俺は今どういう状況なんだ? え、ちょっと・・・・・・!?)
「こら、ユリア、急に眠ってしまったから、紅茶が宝刀にかかってしまっただろう!?」
(・・・・・・・・・・・・・・・・!?)
ガイは自分を疑った。今、若者は、自分を見て”宝刀”だと言わなかったか?
それに、紅茶が降りかかって来ても、熱さを感じない。
「しかたないな、もう」
若者は、布を手にして自分を拭う。
(ちょっと待て・・・・・・! 俺、今、宝刀ガルディオスになってるっていうのかーーーー!?)
そして、若者は、容赦なく宝刀ガルディオスと化しているガイを、軽々と
持ち上げたのだった。
「それにしても、不思議だな。また光を放っている。いったいこの宝刀は
なんだというのだ・・・・・・この少女を、守り抜けということなのか・・・・・・まるで
宝刀に、魂が宿ったかのようだ」

・・・・・・

ガイはどうしたらいいのか分からなかった。だが、この若者が、この少女の事を
ユリアと呼んだ事が気になった。

(そういえば、宝刀ガルディオスは、ユリアの時代の事を見て来たんだっけか・・・・・・)

ガイは、まさかそのユリアの中に、ルークがいるとは思いもしなかった。